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医療 × 名作検証ブラック・ジャックを「今」読みとく

第12回座談会「弁があった!」1975年 初出

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ディスカッサー

池田 徳彦先生

東京医科大学
呼吸器・甲状腺外科学分野 主任教授

長島 公之先生

長島整形外科 院長

長島先生:
本話には、テーマが大きく二つあります。一つは、縦隔気胸の処置の診断・治療、もう一つは、ドクター・キリコ(以下、キリコ)の登場回ですので、安楽死について考えてみる、です。どうぞよろしくお願いいたします。
池田先生:
よろしくお願いいたします。
図1

図2

長島先生:
まず、縦隔気胸の処置の診断・治療についてですが(図1)、縦隔気胸という病名は聞き慣れません。先生、いかがでしょうか?
池田先生:
はい、縦隔気胸は聞き慣れません。胸部の臓器は肋骨に囲まれていますが、その中は肺が入っている部屋と、心臓や大動脈などが入っている部屋の2つに分かれています。気胸は、前者に空気が漏れてしまう現象、後者は縦隔と呼ばれる部分で、そこでの空気漏れは縦隔気腫と呼ばれます。
長島先生:
40年前、本話掲載時には定義があいまいだったということはありますか?
池田先生:
いいえ、40年前でも同様です。縦隔気胸という病名は、おそらくないでしょうね。気管支に弁(穴)があって、そこから空気が漏れるという状態であれば、縦隔気腫という診断になります。作者が描いた図2をみても明らかです。手塚治虫は、症状自体は正しく理解しているんですが、疾患名に少々厳密さに欠けた印象です。
長島先生:
なるほど。気胸はよく耳にする病名なので、そちらに影響されてしまったのかもしれないですね。しっかり「肺と肺のスキマ」と描いているのですから、縦隔気腫ということになる。ここでは、縦隔気腫として扱いましょう。
長島先生:
では、縦隔気腫の診断ですが、図1でブラック・ジャック(以下、B・J)は、聴診器と打診で診断しています。これだけで診断がつくものでしょうか。あるいは、CT検査などが必要になりますか?
池田先生:
症状の程度によりますね。少量の空気漏れに対しては、諸検査をしなければ診断は難しいですね。ある程度空気が漏れていれば、首の方に空気が上がってくるんです。重症になると顔が空気で膨れてしまいます。そういう状態ですと、身体所見で診断できますね。この患者さんは相当苦しがっているので、そういった点ではB・Jの診断で問題ないと思われます。
長島先生:
ありがとうございます。この患者さんの症状の描写は正しいですか?
池田先生:
気管に穴が開くと(図2)、空気を吸うたびに気管から空気が漏れてしまう。漏れる箇所が「弁」状になっていると、呼気では弁が閉じてしまい、空気が溜まる一方になるので、単なる「穴」の場合よりも呼吸困難が強くなりやすいですね。

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